結弦くん、福間洸太朗さん、ありがとう。

 

おねえさん、こんばんは。

なかなかお返事できず、ゴメンなさい。

以下、数日前に書いたものです。

 

 

こちらは寒波が来ていて、昨夜はマイナス17℃の気温でした。

寒かった〜！

 

今日は、福間洸太朗さんのピアノリサイタルに行ってきました。

福間さんはアイスショーで、

羽生結弦くんと共演したことがある方なの。

 

2015年に鈴木明子さんの共演ピアニストとして

アイスショーに出演したとき、

トラブルによる製氷作業中、機転を利かせて

ショパンの「バラード第1番」を弾いてくれたのね。

それを聴いた結弦くんが、翌日のショーでの共演を熱望したらしいの。

フィギュアとの共演は、曲自体もカットされて短くなったりしているし、

テンポもいつもの演奏とは違った要求をされたりするわけでしょう。

短時間で、結弦くんの演技にしっかり合わせた技術と表現に、

フィギュアファンの心もつかんだ、ということで、

なんてすてきな方なんでしょう、とわたしも思っていました。

 

20歳でクリーヴランド国際ピアノコンクールで日本人初の優勝を果たし、

今はベルリン在住で世界を舞台に活躍されていらっしゃる。

ソロだけじゃなく、オーケストラとの共演も多数あり、

パリ・オペラ座バレエ団のエトワール、マチュー・ガニオと共演するなど

幅広い活動をされているんですって。

これらはリーフレットを見て、今日初めて知った情報ですが。

 

今日のリサイタルは、収容人数が200人ほどの小さなホールで、

わたしの席は前から2番目だったので、

ごく間近で音楽を感じることができました。

音がそのまま身体中に響いてくる、というより、なだれ込んでくる。

 

福間さんは超絶技巧で知られる方らしいのだけれど、

最初の曲「ああ、お母さん、聞いてちょうだい」による12の変奏曲K.265では

音色は鋭くはなく、柔らかく響く印象。

ほら、「のだめカンタービレ」の曲を弾く場面で、

音がキレイなたくさんの丸い玉になって、

ピアノを弾く手元から舞い上がっていくような絵があるじゃない？

あんな感じ。

 

2曲めからは、モーツァルトやベートーヴェンの転機になったような、

重く暗く激しい感じの選曲が多かったの。

わたしは普段クラシックを聴くとき、暗い曲は絶対聴かない。

クラシックだけじゃなく、他のどのジャンルの音楽でも、

小説でも、映画でもそう。

暗かったり悲しかったりするのは、イヤなのです。

 

でも今日わたしはベートーヴェンの孤独や苦しみを、

福間さんのピアノの中で

はっきりと自分のことのように経験し、

 

そして・・。

アンコールの時、わたしの目からは涙がポロポロとこぼれ落ちていました。

 

昔読んだジョン・アーヴィングの小説、「ホテル･ニューハンプシャー」に

「悲しみは沈まずに漂う。」という言葉が出てきます。

小説の内容は断片的にしか覚えていないのに、

その言葉だけがずっと残ってた。

 

Hが亡くなってからずっと、

わたしのまわりには悲しみが漂っていたように思います。

けれど、いつしかそれは漂うのをやめて心の奥底に沈んでいった。

それは時折起こる風にあおられて、ふわりと浮かんできては

わたしに涙を流させることもあったけれど、

たいていの場合は忘れさられていた。

いいえ、やっぱり生きていくために忘れようとしていたのでしょう。

 

福間さんの指が叩き出した音は、

容赦なく沈んだ悲しみを捕らえ、ぐるぐるとかき混ぜて、

音の嵐とともにどこかへ吹き飛ばしました。

びゅーん！というような勢いで・・・。

 

癒されたという言葉は、適当ではない気がします。

かなり、荒療治な感じでしたから。

 

でも、涙を流した後に残されたわたしの心は

静かで軽やかでほのかに明るかった。

 

結弦くんが共演したいと思った福間洸太朗さんの演奏が聴ける！と、

わたしは半ば好奇心からチケットをとったのでした。

こんな展開になるとは想像もせずに。

 

音楽はホントにすごいのね。

本物の芸術家はどの分野の人でも、ヒーラー的な力を持っているんだな、と

あらためて思った日でした。

 

人間はみな自分の苦しみを、

この世で一番の苦しみだと思いがちだけれど、

そうではない。

 

誰もが、何かしらの傷を抱え持っているからこそ、

この偉大な作曲家たちの音楽はこれだけの普遍性を持って

人々の心に訴えかけ続けるのでしょうね。

そして、愛や喜びもまたしかり。

 

福間さん、ありがとう。

福間さんの音楽をもっともっと聴きたい！と、

今思っています。

 

こんなすばらしい出会いをくれた、結弦くんに感謝！