おねえさんからお手紙がこない日は…
大好きな紅茶の話でもすることにしましょう。
紅茶が好きです。
それはずいぶん小さな子どもの頃からですが、
初めて紅茶を飲んだのがいくつのときだったのかは覚えていないのです。
「さあ、ティーパーティーだ。」
父が言い、遊んでいた子どもたちが「わあい!」とリビングに集まります。
たいていの場合それは日曜日のことで、
紅茶をいれるのはいつでも父でした。
母もこのときばかりはゆったりとしたお客様。
ティーパーティーとは言っても、何が出てくるということもなく、
たいていは紅茶だけ、ときにはウィスキーボンボンとかチョコレートみたいな
お菓子がついてくることもある、というようなものでしたが、
なにしろ父のいれる紅茶は美味しかった。
温めた透明なポットに熱いお湯を注ぐ。
しばらくすると紅茶の葉がポットの中で踊り出す。
父がポットを軽く揺らすと、美しい琥珀色の中で
突然にバラバラと紅茶の葉が崩れ落ちる。
私はこの瞬間を眺めるのが好きでした。
温めたカップに紅茶が注ぎ分けられ一人一人に配られると、
まず白いカップの中の紅茶の色の美しさに見とれてから、角砂糖を入れる。
ジュッとお砂糖が崩れたところを、お茶碗の中がざらざらしなくなるまで
くるくるとスプーンでかきまぜる。
お茶碗を持ち上げると、温かい湯気といい香りがフワっと顔を包む。
口にふくむとしっかりとした風味と甘さが広がる。
日曜の午後の明るい日差しの中で、
しあわせなんてことを考えたこともなかった子どもが、
ずーっと月日がたってから
「ああ、なんてしあわせな時間だったろう。」と思い出す、
永遠とも思われるひとときなのでした。
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