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24時間TV「天と地のレクイエム」


24時間TV「天と地のレクイエム」
「天と地のレクイエム」。
2015年の彼の新しいエキシビションプログラム。
曲は『東日本大震災鎮魂歌「3.11」』
震災から4年。
つらい経験を人は忘れようとします。
そうじゃないと生きてはいけないから。
4年は想像を絶する経験を過去のものとするには、
まだまだ短かすぎるかもしれません。
わたしは少し不安でした。
このプログラム、被災地の方たちにはつらすぎるのではないかと・・・。
彼の渾身の演技は、やっと静まりかけた心の中を
もう一度大きく底からかきまぜるようなものかもしれない、
そんなふうに思われたのです。
自分の中の大きすぎる悲しみ、苦しみと向き合うことは、恐いこと。
その恐さと向き合う勇気があるのかどうか。
けれど。
24時間TVで結弦くんが演じるレクイエムを
じっと見つめる被災地の方々。
結弦くんの滑る姿に、
ご自分の体験や思いを重ね合わせてもいるのでしょう。
その表情には、悲しみ、苦しみを反芻しつつも、
自分の人生の悲喜こもごもを、
愛おしみ慈しむような視線も感じられました。
深いしわが刻まれたそのお顔に、
わたしたちはまた教えられるのでした。
人は弱いけれど、強い。
どんなことがあっても人は生きていくのだと。
4年前のあの日々、
あの状況の中誰一人我れ先にとはならず、
助け合い、分け合い、譲り合っていた東北の方たち。
肉親が亡くなっても、じっと耐えていた方たち。
その姿に日本人だけではなく、世界中の人々が感じ入った。
けれど外に表さないからこそ、その悲しみは
心の奥底に閉じ込められたままだったのではないでしょうか。
できることなら、
今それを結弦くんの滑りとともに、解放してほしい。
結弦くんの演技は自らも被災した者として、
一緒に苦しみの中から立ち上がっていくのだという意志の表明であり、
おおぜいの亡くなられた方たちの魂への鎮魂でもあり、
想像を絶する経験を、
想像するしかない私たちに伝えるためでもあります。
私たちも、共に悲しみ、悼み、祈ることができるように。